ナマスカール🙏
点描・砂絵人の鈴木伸明です。
みなさんは、「Poubha(ポウバ)」というネパールの伝統芸術をご存知でしょうか?
私は以前、ネパールを旅していたときにこの芸術と出会いました。
それは偶然のようで、実は必然だったのかもしれません。
アート工房にふらりと立ち寄ったある日、一枚の絵が私の目を釘付けにしたのです。
その絵の前に立っていたのが、ネワール族の曼荼羅絵師、ロク・チトラカール師。
静かに、でもどこかメガネの奥から深い眼差しで作品を見つめるその姿に惹かれ、思い切って話しかけてみました。
「これはPoubhaといって、ネワール族が何世代にもわたり描き続けている神聖な絵なんだよ」
その一言が、私の中で何かを大きく揺り動かしました。
Contents
Poubhaってどんなアート?
あなたは「タンカ(Thangka)」という絵をご覧になったことはありますか?
チベット仏教の宗教画で、布に描かれた色鮮やかなアートです。
Poubhaはそれと似て非なるもの。
ネパール、特にカトマンズ盆地に暮らすネワール族の文化から生まれた、独自の宗教絵画なのです。
Poubhaのキャンバスは布。
そこに描かれるのは仏や菩薩、神々、曼荼羅、そして神聖な物語。
それらは単なる装飾ではなく、儀式や瞑想、そして祈りの形として長年用いられてきました。
Poubhaの魅力に触れて
私はその場で何枚ものPoubha作品を見せてもらいました。
どれもが驚くほど細かく、彩色はまるで宝石のように輝いていました。
ロク師が語ってくれたように、それらの作品はただ描かれたものではなく、祈りの道具であり、精神性そのものが表現されていたのです。
■その1:構図の美
Poubhaは縦長の布に描かれ、中心には主尊となる神仏が堂々と鎮座。
その周囲に護法神や象徴が幾何学的に、そして曼荼羅的に配置されます。
曼荼羅と同じく、宇宙の秩序や人間の意識の構造を表しているように感じます。
あなたもこの中心から広がる構成に、安心感や不思議なバランスを感じたことはありませんか?
■その2:顔料の神秘
使用される絵具は天然鉱物顔料や金箔。
ひとつの色にも命が宿っているような気がしました。
手作業で顔料を練り、丁寧に筆を入れていく──その積み重ねが、深みのある表情を生み出しているのです。
■その3:儀式的な制作
ロク師は、Poubhaを描く前には瞑想し、清らかな心で筆をとるのだと言っていました。
まさに、描くというより「祈るように描く」。
アートが神聖な行為であるということを、私はその姿から教わった気がします。
Paubhaと曼荼羅アートの「縁」
色砂や点描でマンダラを描いている私にとって、Poubhaの世界はとても馴染み深いものでした。
曼荼羅と同じく、Poubhaにも中心から放射状に広がる宇宙観が描かれており、その配置や色、線、形すべてが「意味」を持っているのです。
あなたも曼荼羅を描いていて、なぜか「整う感覚」を感じたことはありませんか?
それは、こうした宗教アートが本来、精神統一や瞑想のための視覚の道具だったからなのかもしれませんね。
私が受け取ったPoubhaのエッセンス
Poubhaに触れた時、私は「これは祈りだ」と直感しました。
ロク師が言っていた、
「この絵は私の祈りであり、神への贈り物なんだ」
という言葉が、今でも心に残っています。
曼荼羅アートもまた、見た人、描いた人の心に優しく働きかけ、癒しやインスピレーションを与えてくれるものです。
Poubhaとの出会いは、私のマンダラ創作にも新しい風を運んでくれました。
Poubhaを現代に活かす方法
「伝統芸術は昔のもの」なんて思っていませんか?
いえいえ、Poubhaの構成や象徴、色彩の力は、今を生きる私たちのアートにも活かせる宝の山なんですよ。
たとえば──
・描く前に軽く瞑想して心を整える
・Poubhaの構図を参考に曼荼羅の中心を強調する
・天然色のような深い色合いを点描に取り入れる
少しの工夫で、作品がグッと奥深くなるんですね。
最後に──祈りのかたちとしてのPoubha
Poubhaは、ネパールの人々が大切に守り続けてきた魂のアートです。
描くという行為の中に、宇宙があり、祈りがあり、心がある──
それは曼荼羅アートにも通じる普遍的なもの。
もしあなたが創作に迷ったり、気持ちが落ち着かない日があったら、ぜひPoubhaの絵を静かに眺めてみてください。
きっと心の奥に、あたたかく優しい灯火がともるはずです。
ステキ・楽しく・ハッピーなマンダラ・ライフを~✨
ps
ロク・チトラカール師のPoubhaは東京にある慈雲山曼荼羅寺 観蔵院の曼荼羅美術館で感じることができますよ。
https://kanzouin.wixsite.com/mandala/museum
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